涙なくして読めない感動の物語、賢者の贈り物。女友達編です。
☆☆☆
独身で長く片想いをしている相手がいる派遣社員アラサーのマナミと、同じく独身で片想い歴数年の飲食店アルバイトのリオ(仮名)は、似たような境遇でとても仲良く、お互いを親友と思い、いつも相手の幸せを願っていました。
あるクリスマスが近い日のことです。マナミは派遣会社から、年内で今の派遣先は期間終了、更新がないことを告げられました。しかも、仕事がヒマという理由で、年内は28日まで出勤予定が、23日までと言われたのです。家賃やその他の出費を考えると、お正月のお餅を買うのも苦しい経済状況に追いやられてしまったのです。
その頃、リオの勤務先の飲食店は、ほかのとあるバイトがある不始末をやらかし、ネットで炎上してしました。その不始末は、店の衛生を疑われる内容で、来客は途絶え、店はついにクリスマスを待たず閉店となりました。日割りでもらえたお給料は、家賃や光熱費を払ったらほとんどゼロです。
そんな中、2人は自分の雇用状況は隠したまま、空いてしまったクリスマスの予定を埋めようと、なにより仲良しの友達とささやかでも楽しいクリスマスを過ごそうと、会うことにしました。
クリスマス当日。2人はヤマダ電機の食品売り場でスパークリングワインを、ケンタッキーで普通のチキンを割り勘で買い、リオのアパートでささやかなパーティーを催しました。
「メリークリスマス!来年はいい年になるといいね」
それから、2人はお互いに、そうだ、実はプレゼントがと、小さな紙バックを取り出しました。なんと、2人が取り出した紙バックは同じ有名なデパートコスメのものでした。2人は驚いて顔を見合わせました。
「マナミ、それって」
「え、リオ、もしかして」
とにかく、2人はお互いの紙バックを交換し、それから、せーの、でラッピングをはがしました。
すると、あの、恋が叶うと有名なエスティローダーの婚活リップ、刻印入りが現れたのです。
マナミは、生活のため、そしてリオに贈る婚活リップを買うために、かつて正社員だった時代にボーナスで買った、あるブランドバッグを手放していました。経年劣化でバッグは数千円にしかなりませんでしたが、惜しげもなく彼女はリオのために婚活リップを買いに走ったのです。
そして、リオもまた、バイト先が閉店したあと、自分へのご褒美で週一食べていたハーゲンダッツのアイスをあきらめ、大好きなハチクロ他、何十冊かの漫画を売って、婚活リップ代を捻出したのです。
お互い、自分も長く片想いをしていて、恋が叶うジンクスにすがりたいのは自分も同じなのに、自分用ではなく、大好きな親友のために、自分たちにとっては大金をはたいたのでした。
その翌年。
美しい心をもった彼女たちを、神様はちゃんと見ていました。2人は片想いの彼と結ばれたのです。結婚後も親しくお互いの家を行き来する仲となっています。
めでたしめでたし。
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