【殲滅したい男ども(1)】ドローンがAmazonで買える時代にテレビの大きさを自慢する男


*恋の修行に疲れたときの息抜きに。絶望恋活備忘録、「殲滅したい男ども」シリーズです。

合コンで、商社マンと名乗る男Dと知り合い連絡先を交換したA子。
Dは40代になったばかり。頭頂部が冬は寒そうな印象だが、コミュニケーション能力、服のセンス、身長などは全て平均点で、アラフォー独身、正社員登用の可能性がゼロに近い中小企業で契約社員で契約更新6回目を秋に迎えられるかハラハラしているA子にとっては、昨今珍しいレベルの好物件だった。

なにより、見た目が人間レベルでまともな収入のある、死期が迫っていない年齢の男性から、連絡先を聞かれることが、嬉しかった。

とうぜん、Dから2人で飲みに誘われたA子は2つ返事でOKをした。そして、そこそこ小洒落たレストランで、割り勘とか2000円でいいとも言われず、全額奢ってもらえた。

こうなれば、部屋に誘われてももったいぶらずに応じよう、だって断って2度目がなかったら、、、などと、A子は考えていた。

しかし、彼女はあろうことか、その夜、Dの誘いを断り、自腹タクシー5000円近くを払って1kのアパートに帰宅した。

「だって、そいつ、絶対私のこと哀れな貧乏おばさんと思ってたよ?」

「なんでそんなふうに思ったの?」

「だって、そいつとは私、最初の合コンのとき、家にいるとき何してるかって話になって、私がDVD観てるって言って、これまで何見たか全部ラインナップあげたんだけど。アバターの話になったとき、そいつ、私の家のテレビが3Dなのか、何インチなのかって尋ねてきたのね」

「ふむふむ」

「で、そのときは初対面だし、私も特に気にせず正直に32インチで普通のテレビって答えたの。そしたら、飲みに行った日、そいつなんて私を家に誘ったと思う??

『俺の家、テレビ50Vで3Dだから、迫力のある大画面でもう一度アバター見たいでしょ?』

だって。しかも、すごいドヤ顔で!もう、はぁっ??なんなの、いきなりお前は家電屋の押し売り販売員か。いまどきテレビの大きさで女釣れると思うのか、いや、むしろテレビの大きさで釣れると思われたなら舐められまくりでムカムカするし。

本気で善意で言ってたなら、それも凹むわけよ。DVD観るくらいしか楽しみがないのに、たった32インチのちっちゃい画面で満足してる貧乏人だから、大画面の迫力www しかも3Dなら喜ぶだろう、とか思われたって、みじめ過ぎ」

ということで、A子は2度と誘われなくていいと決意。「大画面なら、アバターは前の彼とシネコンで観たことあるし、単に家で見直したのはストーリーを今一度確認したかったからで、別に画面の迫力とか求めてない。ドローンがAmazonで一般人でも買える時代に、テレビの大きさがどうとか、別にそういうの求めてないし」

と、淡々と語り、終電が終わっていたのに終電に遅れるから!と、いったい何が逆鱗に触れたのかまったく理解できず呆然とした表情を浮かべるDの前から走り去ったのだとか。

☆☆☆

32インチ、充分大きいよね。
私なんかDVD再生機持ってないから、14インチのノートパで観てるよ。大丈夫、男は星の数ほどいるから、A子と同じようにテレビは32インチで充分って価値観で、頭頂部もみっしりした男と出逢えるよ。